光学系エンジニアの起業

起業

起業の背景

私は光学系の研究開発を15年近く経験してきました.そのキャリアでは,企画や研究など製品開発の入口を経験した時期もありましたし,量産設計や量産試作などの出口を経験した時期もありました.様々なフェーズでの光学エンジニアの経験を積むなかで,自身で独立して仕事を受注したいという思いが強くなりました.

そして,このたび光学系の研究開発を担う会社「株式会社LABOPT」を設立しました.本記事では,これから独立を目指すエンジニアの参考なればとの思いから,起業する際に私が行ったことの記録を残したいと思います.

起業の記録

起業で行ったことの記録を以下にリストとしてまとめます.

  1. 資本金の積立口座の開設と,積立の開始
  2. 事業計画書を作成:商工会議所の起業セミナーを受講しながら作成
  3. 事業に関する知識を共有するブログを開設:本ブログ「光学系エンジニアのノート」を開設
  4. 会社設立に関する本を読書
  5. 事業の形態を選定(株式会社・合同会社・個人事業主):株式会社を選定
  6. 会社名を決定:株式会社LABOPTに決定
  7. ロゴマークを作成:ココナラでデザイナーさんに依頼
  8. 会社印を作成:ネットショップでチタン製の3点セットを購入
  9. サーバーを契約し、会社ドメインを取得:「co.jp」ドメインの仮登録
  10. Microsoft365を契約:取得したドメインでメール環境を構築
  11. 会社ホームページの作成開始:パワポでアウトラインを考え,wordpressで実装
  12. クラウド会計ソフトfreeeを契約:会計処理をソフトを使いながら勉強
  13. 株式会社の定款を作成:電子定款をfreee会社設立で作成
  14. 定款記載の公告の方法に電子公告を選んだため,電子公告用のURLを取得
  15. 定款を商工会議所の担当者にレビューしてもらい,アドバイスをもとに修正
  16. 公証人役場で定款認証:公証人に電子定款を認証してもらい,電子データ(CD-R1枚)とハードコピー(2部)を入手
  17. 資本金の払い込み:積み立てた資本金を一度引き出し,再度入金(銀行窓口にて手続き)
  18. 登記書類の準備:法務局に提出する書類を準備
  19. 法務局で法人登記:最寄りの法務局に伺い,登記書類を提出
  20. 書類提出から1週間程度で登記完了:法人番号検索で登記完了を確認(数日後に法人番号指定通知書が届く)
  21. 法務局で印鑑カードを作成:印鑑証明書の発行には印鑑カードが必要で,窓口にて請求
  22. 法務局で登記事項証明書と印鑑証明書を入手:社会保険,税金,銀行口座の手続きで必要
  23. 銀行で口座の開設手続き:審査があるため早めに動く(要:登記事項証明書の写しと印鑑証明書の写し)
  24. 臨時株主総会を開催し,役員報酬を決定:定期同額給与による毎月の報酬額を決定,「臨時株主総会議事録」と「取締役の報酬金額に関する決定書」を作成して保存(役員報酬額は社会保険の手続で必要)
  25. 年金事務所で社会保険の新規適用届け:(要:登記事項証明書の原本、法人番号検索結果の写し)
  26. 年金事務所で社会保険への加入手続き:厚生年金と健康保険の加入手続き
  27. 社会保険料の口座振替依頼書の提出:銀行口座ができたタイミングで手続きを実施
  28. gBizIDの発行手続き:社会保険の電子申請に必要(要:印鑑証明書の原本)
  29. 税務署にて国税の手続き(法人設立届出書,青色申告の承認申請書,給料支払事務所の開設届出書,源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請書,適格請求書発行事業者の登録申請書):アドバイスを受けながら窓口で手続き(要:登記事項証明書の写し,定款の写し)
  30. 県税務署と市役所にて、県税と市税の手続き(会社設立届):eLTAXで電子申請(要:登記事項証明書の写し,定款の写し)
  31. e-Taxの開始届出書の提出
  32. 「co.jp」ドメインを本登録
  33. 「Canva」を使って名刺のデザインを作成し,「ラクスル」で印刷
  34. ハローワークで「起業による雇用保険受給期間の延長」手続き(要:離職票-2と登記事項証明書写し)
  35. 会社ホームページを公開
  36. 銀行口座ができたタイミングで資本金を会社口座へ入金:入金手続きは銀行窓口で実施
  37. ideco口座の申込:確定拠出年金の個人運用に必要で,掛金は事業主払込を選択(将来従業員を雇用する際に福利厚生としてideco+を導入したいため)
  38. Autodeskのスタートアップ企業向け Autodesk Fusion 360 プログラムへの申込:Autodesk者の支援事業で、特別価格で3D-CADソフトを使用することができるため
  39. 地元の商工会に入会:経営に関わるアドバイスや情報を貰うため
  40. 国税ダイレクト方式電子納税依頼書の提出:所得税の源泉徴収税を「e-Tax+銀行口座振替」で申告・納税するための手続き、税務署から依頼書が届いたので記載して税務署へ郵送
  41. 地方税共同機構ダイレクト納付口座振替依頼書の提出:地方税の源泉徴収税を「eLTAX+銀行口座振替」で申告・納税するための手続き、eLTAXで口座を登録して印刷した振替依頼書を金融機関へ郵送
  42. 個人住民税の「普通徴収から特別徴収への切り替え依頼書」の提出:住民税の納付を普通徴収から特別徴収へ切り替えるために必要、市役所へ提出
  43. 個人住民税の「特別徴収税額の納期の特例に関する申請書」の提出:住民税の納付を2回にまとめることができ、支払い負担を減らせるため、市役所へ提出
  44. freee人事労務を契約:給与計算や社会保険の手続き、納税の手続きなどで必要性を感じたため
  45. 会社名義のクレジットカードを作成:クラウドサービスのサブスク料金をカードで決済するため
  46. 旅費交通費規定を作成:出張で発生した経費を精算する際に、「出張旅費等特例」に基づく処理を可能にするため
  47. freee人事労務を使って給与計算を実施:役員報酬から源泉徴収所得税や社会保険料、住民税などを控除、給与支払いによる会計処理をfreee会計へ同期
  48. 給与振り込みを実施:役員報酬から控除した残高を個人口座へ入金
  49. 社会保険料納入告知額・領収済額通知書が届く、このタイミングで通知書を電子データで受け取るサービス「オンライン事業所年金情報サービス」の開始申請をgBizIDを使ってe-Govで実施:この手続きを行うことで、納入告知額・領収済額通知書はオンラインで確認できるようになり、替わりに郵送されなくなる
  50. 所得税徴収高計算書の作成と提出をe-Taxで実施:freee人事労務の計算書作成機能を使用し、計算結果をe-Taxに転記して提出
  51. iDeCoの事業所登録通知が届く。従業員の掛け金を会社の口座から引き落とすため、会計ソフトに定期的な出金として登録。
  52. 従業員の、住民税の特別徴収書類(納付書)と住民税決定通知書が5月頃に届く。納期特例の申請が受理されたため、11月分と5月分の計2回の納付を実施する予定
  53. ホームページに英語バージョンを追加。日本で働く海外の方や海外企業の需要に答えるべく作成。日本語ページをメインとし、サブディレクトリ(/eng)に英語バージョンを作成。構造の明快性や軽量性、柔軟性のためにWordPressのプラグイン使わずPHP(header-en.php, footer-en.php, page-en.php, function.php)に処理を追加。翻訳はDeepLを使用しつつ、自身で手直し。英語ページをxmlサイトマップに追加し、Google Search Consoleへ登録
  54. Outlookで送信したメールが、デーモンから帰ってきた。SPF認証で却下された旨。SPF認証は既に行っていた。追加でDKIM認証の設定を実施。併せて、DMARC認証をDNSサーバに設定。以降、デーモンから連絡なし。DMARCのレポートを監視しつつ、設定を修正していく予定
  55. e-Rad(府省共通研究開発管理システム)の研究機関登録申請書を提出。今後、競争的研究費を利用した研究開発を行いたいために申請。申請には履歴事項全部証明書が必要なため、登記・供託オンライン申請システムの「かんたん証明書請求」を利用。オンラインで証明書を請求でき、郵送で届く。競争的研究費による研究開発事業は念願だったので、これがファーストステップ。
  56. 「給与所得の所得税徴収高計算書(納期特例分)」をe-Taxで提出。納期特例として、1月~6月分の所得税を一括で納税できるため、事務手続きが楽。
  57. 「社会保険の算定基礎届」をfreee人事労務の機能を使用して作成し、gBizIDを用いて提出。freee人事労務からgBizIDにログインできるため提出も容易。
  58. 「社会保険の賞与不支給報告書」をe-Govで作成して提出。事業所整理番号に3箇所記入欄があり、「都道府県コード(半角数字)」「整理番号(半角数字)」「整理記号(全角カタカナ)」で入力した。都道府県コードは日本年金機構の電子申請マニュアルに記載されている[5]。
  59. 電子契約システムの導入を検討し始めた。まずは、「CLOUDSIGN」の無料アカウントを作成して使用し、電子契約に慣れたうえで本格導入するシステムを決めたい。
  60. 「業務委託契約書(請負契約)」や「業務委託契約書(準委任契約)」、「秘密保持契約書(NDA)」の雛形を、書籍を参考にしながら準備を始めた[6]。
  61. 初めての決算業務をfreee申告を利用して実施した。日頃からfreee会計で帳簿付けを行っていたため、決算処理は3日程度で終えることができた。freee申告での入力手続きはガイドブックを参照しながら進められたため、入力に手間取ることは少なかった[7]。申告手続きはfreee申告のシステム上からe-TaxとeLTAXに接続して電子申請をしたため、freee申告上で全てが完結した。法人税はfreee申告 法人税、消費税はfreee申告 消費税から実施した。

2024/08/06現在までの進捗はここまで.Updateがあれば更新したいと思います.

参考文献

[1] 中村真由美, “会社設立と運営の教科書”, ナツメ社.
[2] 井上達也, “起業を考えたら読む本”, 明日香出版社.
[3] 浜田勝義, “はじめての人の簿記”, かんき出版.
[4] 宇田川敏正, “個人事業の教科書1年生”, 新星出版社.
[5] 日本年金機構, “電子申請 電子送付 ガイドブック”, https://www.nenkin.go.jp/denshibenri/online_jigyousho/online_jigyousho.files/guidebook.pdf
[6] 太田大三ら、”図解即戦力 契約書の読み方と作成がしっかりわかる本”, 技術評論社.
[7] freee株式会社, “freee申告の「使い方ハンドブック」”, https://corp.freee.co.jp/news/ctax-handbook-renewal.html